道祖神様の下着は何色か。

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ちょっとそこまでタン食べに② 終

f:id:n_hermes:20191223165248j:plain蔵王温泉

松島を発ち山形へ向かう。夕焼け赤く染まる雁の腹雲の空のもと、仙台から山形を結ぶ仙山線の車窓から見える山々にはところどころ赤や黄色に紅葉した木々があり、秋の始まりを感じる。仙山線沿線で著名なものとして立石寺がある。山門派で有名な円仁によって建立され、岩に岩を重ねたような断崖絶壁に幾つもの経堂があり、山水画の風景を感じることができる。また松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んだ場所として知られている。通常、岩に染み入るほど蝉が鳴いているのならば、喧しいはずだろう。だが芭蕉は山上から眼下にうねる緑の大地と頭上に広がる梅雨明けの昊天を見て蝉の鳴く現実世界の向こうから深閑と静まりかえる宇宙が姿を感じ取ったのであろう。f:id:n_hermes:20191226021545j:plain

時間の都合上、立石寺には参れず車窓から眺めるだけであった。山形駅に到着するころには19:00を過ぎていた。私は急いで駅近のホテルを予約することにした。ホテルに荷物を投げ入れ夕飯を探すも駅周辺には居酒屋ばかりで定食屋が見つからなかったのでラーメン屋に入ることにした。食事をしている最中、隣の男が声をかけてきた。おおよそ40代後半で非常に酒臭く、面倒だが会話をしようにも呂律が回っていないのでただでさえ聞き取りにくい上に、方言の訛りがきつくて全くわからない。結局、店員さんに半ば通訳してもらう形で会話をしていたが、なぜかこの酔っ払いは私を気に入ったらしく飲み屋に連れて行ってくれるようだった。まあどうせ場末の安居酒屋であったとしても、旅行中でとりあえず酒を飲みたいという衝動に駆られ着いていくことにした。だがその酔っ払いが立ち止まったのはいかにも高級そうなバーであった。店を間違えたのではと思い何度も男に尋ねるが「大丈夫だ」の一点張りで聞く耳を持たない。恐る恐る店内に入ると女性のバーテンダーの方が出迎えてくれた。店内には私たち以外の客はおらず、薄暗い照明の下で、ジャズが流れグラスの触れ合う音や氷を割る音が時折混じっていた。バーテンダーの女性はベリーショートの髪のクールな方であった。注文を聞かれたので連れてきてくれた男と同じ、ウイスキーの水割りを頼んだ。ウイスキーのことなどよくわからないが、ただ出された酒はバニラ香と木の香りを感じる甘い香りは力強く豊かだが、バランスのとれた芳醇な味わいであった。男にいくらでも飲んでいいと言われたが、どうやら男はもう限界であったのかカウンターで眠りについてしまったようだ。せっかくなのでバーテンダーの方と話すことにした。彼女は生まれも育ちも山形だがロックバンドBUCK-TICKにはまり、今でも日本中でバンドのおっかけをしながらこのバーで働いているそうだ。最初の酒を飲み終え、次何を飲むか考えるにも全く知識がないので、お任せで作ってもらうことにした。次に出てきた酒は黒ビールを用いたシャンディガフで真っ黒に近い液体の表面に黄金色の泡の層が輝いている。通常のシャンディガフ同様、ホップの苦みがジンジャーエールで和らいでとても飲みやすいが、黒ビールがこの酒にさらなる深みを与えている。その後も山形の名産であるサクランボを用いたものや、私の出身である福岡をイメージしたカクテルなど色々と無理をいい様々な種類の酒を飲ませてもらった。酒を飲みながら話すうちに相当な時間が経っていたようで男も復活し、店を後にした。店を出る直前に彼女の行きつけの店が新宿にあるということで彼女の名刺とともに地図を描いてもらった。

 

店を出て男に礼を言った後、私はホテルで深い眠りについた。翌朝ホテルが朝食付きだたので会場に向かうと豪華な朝食が準備されていた。おかずはさることながら、米が非常に美味しい、あまりにも美味しいのでおかずに一切手を付けず一杯食べてしまった。何度もおかわりをして満腹になった私は蔵王温泉に向けて出発した。

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蔵王温泉山形市の南東部、宮城県との県境近くにある温泉だ。国内有数のスキー場があり、冬にはスキー客で賑わう。山形駅からバスで向かい、降車すると一面に広がる硫黄臭である。臭い臭いと思いながら、浴場へと向かった。

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温泉に入った後、昼食としてジンギスカンを食べた。ジンギスカンといえば北海道と思っていたが、どうやら鉄鍋を使って調理するのは蔵王が発祥だそうだ。湯上がりの体にビールと羊肉が染み渡る。

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昼食後、また東京へ7時間かけて帰宅した。今回の旅では人生初の東北で震災をものともせず、地域を明るくしていこうとする地元の方の活力を強く感じた。風景のみならず食事も素晴らしく、再度東北へ訪れようと思った次第である。